

鎌倉山の麓にある敷地は北と東を擁壁とその上にある森に囲まれ、南は約3mレベルの低い隣地に家が建っている状況でした。
こうした場合、北側に建物を寄せて南側に庭を配置することがセオリーですが、一方で敷地の南側2階レベルの視点に立つと南西方向に湘南の海を望めることが分かりました。
そこで海への眺望も確保するためセオリーとは逆に南側に建物を配置しました。それによって北側にできる庭をいかに生かすことができるかを考えていきました。


まず北庭に光を届けるため、南に寄せた建物は細長い3つのボリュームに分節し、西に向かって各ボリュームをずらして雁行させていきました。細長く雁行していく構成によって西側隣地からの視線を遮りつつ、南側には海の見えるバルコニーや物干し場、北側には光の入る広い北庭をつくることができます。




生活の中心となるスペースは海の見えるバルコニーのある2階に配しています。
雁行させつつレベル差に変化を与えることで、多様な性格の居場所が見え隠れしながら連続していきます。
高い天井により高窓から北の森を望むリビング、海の見えるバルコニーと連続するダイニング、籠り感がありつつ北庭に開いた書斎など、家族それぞれが時間や気分によって心地よい場所を選んで過ごすことができます。



1階は諸室をコンパクトにまとめつつ、窓から緑を眺める落ち着いた寝室や、庭へと開かれた縁側とつながる子供室など、各室によって北庭との関わり方に変化を持たせています。
南に見える海と北に控える森といった、異なる2つの環境を季節や時間によって切り替えながら暮らしていく住まいの在り方を考えました。

敷地:神奈川県鎌倉市
規模:木造2階建