第7回日本エコハウス大賞グランプリ受賞
第40回住まいのリフォームコンクール 国土交通大臣賞

創作と暮らしの場として蘇る築63年の木造アパート
築60年が経過する京都市内の木造賃貸アパートのリノベーション。かつて学生向けに建てられたアパートを、職住近接型の集合住宅として再生した。
旗竿敷地に建つ既存アパートは仕上げの劣化や露出した多くの設備配管、光の入りにくい敷地状況により雑多で暗い印象を与えており、建物の耐震性も不十分な状態であった。
今後長期的に安定的な運営を行うため、建物の耐震補強、断熱・防火の性能向上を行い長期的視点で不動産価値を維持できる改修を目指した。また屋外空間も含めた空間づくりを行い、時代やエリアのニーズに見合いつつ街の風景の豊かさにも寄与できる賃貸住宅としての在り方を考えた。
改修前は計8戸のアパートであったが、工芸作家が多く芸術大学も近いエリアの特性を踏まえ、1階は共有部となるラウンジ及びアトリエ等に使用できる5室へと改修、2階は住戸のまま改修し、創作と暮らしの場として改修を行った。
1階をワークスペースとして改修することで、木造アパートの弱点となる音漏れに対しても配慮している。
屋外廊下は床材を明るいレンガに変更、建物外部は白・グレー系統の塗装を行い、廊下へわずかに差し込む光を拡散させることで明るい屋外廊下へと改修した。露出する設備配管やメーター類は新たに設けた設備スペースへ集約し、雑多さを解消している。
小さな小窓と玄関ドアが並び耐震壁が不足していた廊下側の既存壁面は、一部を耐震壁としつつ入口を掃き出しのガラス戸とするメリハリのある壁面構成とすることで、暗かった室内に光を取り込んでいる。
また個室への入口は元の壁面から一部後退させたり入口を窄めるなど、ガラス戸としつつも廊下からの視線は遮られるように設えた。壁面を後退させた空間は水場や作業スペースとして使えるアルコーブとなっている。
2階は1階の個室ともセットで借りられる単身者用の住戸として改修している。既存住戸のキッチン廻りには使い様のない3畳の前室があったため、廊下側に土間を設け入居者が自由にカスタマイズできる空間をつくった。土間は室内化した内土間、屋外となった外土間の2種類のパターンがあり、入居者は自身の生活スタイルに合わせて好きなタイプの住戸を選ぶことができる。
土間は植栽や自転車をディスプレイする場所、テーブルとイスを置いてテラス的に使う場所、仕事場など入居者によって多様な使い方がなされている。
居室は既存天井に使われていた化粧棟木などを再利用しつつ新旧の材料を組み合わせ、改修前と同じ舟底型の天井としてかつての面影を残した。
時代のニーズから取り残され行き場を失った木造賃貸アパートに対し新たな役割を与えることで、新築にはできない記憶を継承した空間を持つ、有効な社会資源としての再生を行った。





































事業主:若竹寮
企画・プロデュース:アッドスパイス
構造設計:MOF
施工:椎口工務店
写真:貝出翔太郎
敷地:京都市左京区
規模:木造2階建
受賞:第7回日本エコハウス大賞「グランプリ」
第40回住まいのリフォームコンクール「国土交通大臣賞」
掲載:建築知識ビルダーズ56号
全国賃貸住宅新聞
地主と家主
リフォーム産業新聞
積算資料ポケット版 リフォーム編2024
建築知識ビルダーズ54号
各性能を向上させた具体的な改修方法についてのレポートが以下に掲載されています。
→住宅医の改修事例
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