建物の性能向上リノベーション1 はじめに

ここのところ、既存建物の改修の相談が多くなってきています。
物価上昇による工事費の高騰の影響もあるのか、実家を改修して住まいにしたり、所有する築古の賃貸住宅を改修して新たな入居を見込みたいといった相談を受けるようになってきました。

その際に多くの方が心配されるのが、耐震性能や断熱性がほとんどない古い建物を、安全で快適な建物にすることができるのか、といったことです。
事前にしっかりとした調査をして劣化箇所を把握し、適切な処置を施せば一見ボロボロの建物でも十分に性能を向上させてリノベーションすることは可能ですが、まだまだそのような認識が一般的に広まっていないように思います。

そんなことで、古い建物を性能向上させるリノベーションについて知ってもらい、建物を持続的に使うことを身近に感じてもらいたいという思いから、築60年を超える木造の古アパートを性能向上させて再生したプロジェクト「tede」を事例として、改修の流れや方法について数回に渡ってコラムを書いていきたいと思います。
このプロジェクトで改修したのは賃貸住宅ですが、戸建ての改修や、古い建物を宿泊施設・店舗・オフィスなどへコンバージョン(用途変更)する際にも基本的には同じ流れです。

事例とするプロジェクトは、当時学生用に建てられた築63年の風呂なし木造賃貸アパートを全面改修し、仕事場+住居の職住近接型の集合住宅に再生したものです。
築年数が経つと画一的なアパートに建て替えられるのが当たり前の賃貸住宅ですが、土地の状況や周辺物件との差別化を加味して、リノベーションによって新たな収益性を見込む計画でスタートしました。

この仕事では地域性・事業性・デザイン性を加味しながら性能向上させた上で再生を行ったことの社会的な意義を評価して頂き、住まいのリフォームコンクールで国土交通大臣賞、日本エコハウス大賞でグランプリと2つのアワードで最上位賞を頂きました。

賃貸住宅ならではの計画も踏まえながら、性能向上リノベーションについて記述していきたいと思います。
次回は改修前の建物調査について書いていきたいと思います。